村田作品 全作レビュー!
こんにちは。最近YouTube動画にハマっている私です。
何度もブログなどで発言している通り、私は村田沙耶香さんという作家の小説がめちゃくちゃ好きである。
去年の7月末に初めて「コンビニ人間」を読んで好きになったのをきっかけに、それから1年かけて現在出版されている11冊全ての書籍を読了した。
そんなわけで今回は!そんな私の大好きな村田作品全作レビューをしていきたいと思います!
※なるべく客観性を持たせたいと思っているけれども、あくまでも読んだ私の主観に基づくレビューになります。
村田作品をタグ付けしていくとするならば、
#人間のあり方
#性のあり方
#偏見
#洗脳
#多様性
#スクールカースト
#コンプレックス
#リアル
#ファンタジー
#SF
#グロテスク
#宇宙視点
こんな感じだろうか?
以下、ジャンル別で紹介していきます。
1. 人間の本質に迫り、生き方や社会について改めて考えさせられる系
①コンビニ人間
#人間のあり方 #偏見 #リアル #多様性
読みやすさ ☆☆☆☆☆☆6
私のオススメ度 ☆☆☆☆☆☆6
村田沙耶香といえば、の代表作。2016年、第155回芥川賞を受賞している。
主人公は36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。
オススメポイントは、なんと言っても読みやすさ。160ページと短めなので私は2時間ほどで読み終えたと思う。
さくっと読めて、それでいて内容は濃い。村田沙耶香ワールドの入り口として最も適しているかなと思う。迷ったらこれ。
正直、コンビニ人間が合わないと感じたら村田沙耶香とは根本的に合わないと思うので、他の作家さんを開拓した方がオススメです。読書はいいぞ。
②消滅世界
#人間のあり方 #性のあり方 #SF #グロテスク
読みやすさ ☆☆☆☆4
私のオススメ度 ☆☆☆☆☆5
セックスではなく人工授精で子どもを産むことが定着した世界。そこでは、夫婦間の性行為は「近親相姦」とタブー視され、「両親が愛し合った末」に生まれた雨音は、母親に嫌悪を抱いていた。清潔な結婚生活を送り、夫以外のヒトやキャラクターと恋愛を重ねる雨音。だがその“正常”な日々は、夫と移住した実験都市・楽園で一変する...日本の未来を予言する傑作長篇。
この作品はテーマがテーマなので性的な表現が多い。また、253ページとコンビニ人間と比べるとしっかりとした重量感があるヘビー級。
消滅世界については2月に書いたブログでも触れており、私の感想はそこに書いているので興味がある方はこちらへ。2月の備忘録 - 絶頂は今
私は消滅世界が村田作品の中でも1,2を争うくらい好きです。
③地球星人
#人間のあり方 #偏見 #洗脳 #リアル #グロテスク #宇宙視点
読みやすさ ☆☆☆☆4
私のオススメ度 ☆☆☆☆☆☆6
地球では「恋愛」がどんなに素晴らしいか、若い女はセックスをしてその末に人間を生産することがどんなに素敵なことか、力をこめて宣伝している。地球星人が繁殖するためにこの仕組みを作りあげたのだろう。私はどうやって生き延びればいいのだろう――。
これも本当に本当に本当に大好きな作品。主人公がとにかく不憫で泣いた。
コンビニ人間でも描かれていた、「みんなと同じでない人はみんなと同じを強要され、それが出来なければ異端者として排除される」という描写が地球星人でも丁寧に描かれており、本当につらい。
人間がどれほど愚かで恐ろしい正義を振りかざしているのかがとてもよくわかるお話。
私の感想ブログはこちら。洗脳 - 絶頂は今
④殺人出産
#人間のあり方 #性のあり方 #多様性 #SF
読みやすさ ☆☆☆☆☆☆6
私のオススメ度 ☆☆☆☆4
「殺人出産」「トリプル」「清潔な結婚」「余命」と1冊の中に4作品も収録されている短編集。
ひとつひとつがさくっと読みやすく、様々な角度から村田ワールドをのぞけるので村田ワールド導入にとてもオススメ。
ただ、私は先に消滅世界やしろいろの~を読んでしまったので逆に物足りなかった。
⑤ タダイマトビラ
#人間のあり方 #性のあり方 #洗脳 #ファンタジー
読みやすさ ☆☆☆☆4
私のオススメ度 ☆☆☆☆☆☆6
自分の子どもを愛せない母親のもとで育った少女は、湧き出る家族欲を満たすため、「カゾクヨナニー」という秘密の行為に没頭する。高校に入り年上の学生と同棲を始めるが、「理想の家族」を求める心の渇きは止まない。その彼女の世界が、ある日一変した―。少女の視点から根源的な問いを投げかける著者が挑んだ、「家族」の世界。
消滅世界や殺人出産などで家族のあり方に既存のイメージや概念を覆す衝撃を受けたが、タダイマトビラはその逆で、その"家族のイメージ"に縛られた主人公の物語。
家族とは、母親とは、父親とは、夫婦とは。
人は人に役名を付けたがる。その役のイメージからずれると攻撃する。その人はその役である前にその人でしかないのに。
村田作品では度々出てくる偏見という名の固定概念。それに苦しむ主人公がついに見た景色とは。
感想はこちら。膨張した胸が痛む - 絶頂は今
2. 学生特有の世界に切り込む系
①しろいろの街の、その骨の体温の
#スクールカースト #人間のあり方 #性のあり方 #コンプレックス #リアル
読みやすさ ☆☆☆☆☆5
私のオススメ度 ☆☆☆☆☆5
クラスでは目立たない存在である小4の結佳。女の子同士の複雑な友達関係をやり過ごしながら、習字教室が一緒の伊吹雄太と仲良くなるが、次第に伊吹を「おもちゃ」にしたいという気持ちが強まり、ある日、結佳は伊吹にキスをする。恋愛とも支配ともつかない関係を続けながら彼らは中学生へと進級するが――女の子が少女に変化する時間を切り取り丹念に描いた、静かな衝撃作。
一言でいうなら、リアル。読んでいて、こんなに自分の過去がフラッシュバックした作品は他にないと思う。
主人公は確かに過激だけれど、コンプレックスを抱え、目に見えないが確実に存在するスクールカーストの中で学生時代を過ごした経験は多くの"女子"が持っていると思う。
この作品を読んでただの物語だと感じる人もいるかもしれない。逆説的にそう思う人は幸運な人だったのではないだろうか。
伊吹くんはめちゃくちゃかっこいいです!!!
文庫版では、作家の西加奈子さんが解説をしてくださっている。それもとても良かったので西さんが好きな人にもオススメしたい。
ただ、解説も含めるとページ数が比較的多いので、2~3日かけて読むのが良さそう。
私が以前書いたこの本の感想ブログはこちら。2月の備忘録 - 絶頂は今
②マウス
#スクールカースト #洗脳 #コンプレックス #ファンタジー
読みやすさ ☆☆☆☆☆5
私のオススメ度 ☆☆☆3
私は内気な女子です― 無言でそう訴えながら新しい教室へ入っていく。早く同じような風貌の「大人しい」友だちを見つけなくては。小学五年の律は目立たないことで居場所を守ってきた。しかしクラス替えで一緒になったのは友人もいず協調性もない「浮いた」存在の塚本瀬里奈。彼女が臆病な律を変えていく。
村田作品の中では珍しくスッキリした終わり方のお話。我が街の市立図書館ではなんと児童書コーナーに置かれていた。
しろいろの~でもそうだが、あの時代特有のちょっとしたきっかけで天国にも地獄にも変わる空間は本当に不思議でならない。
作中に出てくる「くるみ割り人形」のストーリーがわからないと途中で???となる。
刺激はそんなにないので読みやすいが、私には物足りなかった。児童書コーナーに置かれているくらいなので、こどもたちとも一緒に読める作品かもしれない。
3. 世界観が強くて難解な狂気系
①ギンイロノウタ
#性のあり方 #洗脳 #コンプレックス #グロテスク
読みやすさ ☆1
私のオススメ度 ☆☆2
「ひかりのあしあと」「ギンイロノウタ」からなる中編集。
どちらも主人公が救いがなくてつらい。性の発想がエグくて難解。しかし村田沙耶香という作家の根幹はこういう所にあるような気がする。性のあり方への探求とも言うべきか。
読んだあとグッタリする。村田さんの作風に慣れていない人は脱落すると思う。
ただ!!!声を大にして言いたい!!!ひかりのあしあとに登場する蛍くんは他のどの村田作品に登場するキャラクターよりもかっこいいぞ!!!まじで!!!優男!!!一番好き!!!
②ハコブネ
#性のあり方 #多様性 #コンプレックス #宇宙視点
読みやすさ ☆☆2
私のオススメ度 ☆1
セックスが辛く、もしかしたら自分は男なのではと思い、男装をするフリーターの里帆。そんな曖昧な里帆を責める椿は、暗闇でも日焼け止めを欠かさず肉体を丁寧にケアする。二人の感覚すら共有できない知佳子は、生身の男性と寝ても人間としての肉体感覚が持てないでいた―。十九歳の里帆と二人の“アラサー”女性。三人が乗る「ハコブネ」は、セクシャリティーという海を漂流する。
全作読んでから感じるのは、まだ読みやすい方だなということ。
読んだ当時は?????って感じだったけど、他の村田作品を読んでいくうちに村田さんが表現したかった本質がなんとなく掴めてきて、ハコブネもそれから腑に落ちた。
とことん性に関する価値観をいろんな角度から探求していくかんじ。女性だから女性らしく、っていうのは私も納得がいかない。
③星が吸う水
#性のあり方 #多様性 #宇宙視点
読みやすさ ☆1
私のオススメ度 ☆1
「星が吸う水」「ガマズミ航海」からなる中編集。
おおむねハコブネと似たような世界観。性の多様性のお話。私は共感できないままフィニッシュした。
けれども、ギンイロノウタのような狂気はあまり感じないので、気がついたら物語が終わっていたようなポカーンとするかんじ。
ただ、性的表現はかなり多め。
④授乳
#性のあり方 #コンプレックス #洗脳 #グロテスク
読みやすさ ☆1
私のオススメ度 ☆1
「授乳」「コイビト」「御伽の部屋」の短編集。
狂気。本当に狂気。小説家村田沙耶香の痛烈な産声。こんなデビュー作あるか!?と思うほど荒削りな脳直異物作品とでも言うべきか。
それでも、全ての作品に通ずるようなテーマは確かにそこにある。
ここを通ったからこそ今の村田沙耶香があるのだ。ただ、本当に意味がわからない部分が多くあり、頭が痛くなる。
以上です!!!是非!!!自分に合った村田作品を見つけてください!!!そして本の感想を一緒に語りましょう!!!
村田沙耶香はいいぞーーー!!!